Category: 経費削減のタブー

福利厚生費と経費削減

福利厚生費

福利厚生費は、経費削減を考える企業においてはまず最初に着手される項目です。
かつて契機が上り調子であったバブル期には、勤務する社員向けに格安の社員住宅を建築したり、リゾート地の別荘契約やその他課外活動への援助などかなり贅沢に金銭が使用されてきました。

ですが不景気となった現在においては、大企業になるほどこうした社員のみを優遇するような会計は社会的に批判を受けるようになっており、かつてのような優遇はできなくなってきています。

社会的な視点以外にも、自社内で会計を適性に行うためにも福利厚生費として計上できる範囲をかなり厳格に定めるようにする企業が増えています。

しかし福利厚生費は、その企業組織で働く人たちにとって大切な企業からの手当となります。
経費削減という目的があるとしても、突然に福利厚生費を大幅にカットするようなことをしてしまっては、気持よく従業員が勤務をすることができなくなって生産性を落としてしまうことにもつながってしまいます。

カフェテリア方式

そこで最近大企業などでとられるようになってきているのが、どのような福利厚生を希望するかを社員がそれぞれ選択するというカフェテリア方式です。

福利厚生費は簿記上においては「法定福利費」と「その他の福利厚生費」との二種類によって処理されるようになっています。

前者の法定福利費とは、厚生年金保険料や健康保険料、雇用保険料などといった企業が人を雇う場合に必要となる勘定科目です。

正社員として人を雇い入れる場合には特にこれらは企業側の方針にかかわらず必ず支払いをしなくてはならないものとされています。

一方で後者の「その他の福利厚生費」では、従業員の親睦を図る行事や厚生施設の利用料、その他創立記念日などの行事開催費や、結婚祝い・香典のための費用となります。

これらの費用は基本的には従業員が受ける「経済的利益」として取り扱いがされるので、所得税法において「給与」の一部とみなされてしまうこともあります。

例えば社員旅行の費用などは基本的には福利厚生費として扱われますが、その参加人数が役員のみであったり少人数だけのものであるような場合には、特定社員への給与として処理をされることになります。

とはいえ、会計責任者の裁量によってはこれらは案外ごまかしがきいてしまうこともあります。
従業員の福利厚生費は削減して、役員の旅行は通例通りというのは経費削減におけるもっともやってはいけない例といえるでしょう。

安全と利益を相反させないために

コピー機

安全第一

経費削減をするときに犠牲にしてはいけないのが安全性です。

しかし経費削減策を考えるときにはどうしても社内にある余剰部分を削るという方法が最初にとられてしまうので、この余剰部分の削りすぎが社内の余裕を全くなくしてしまうことになり、結果的にトラブルなどが起きた時に対応力のない線の細い組織になってしまったりします。

実際にあった例を挙げると、JR西日本で起こった福知山線の脱線事故などや、しばしば起こる航空会社での整備不良による事故、さらには原発における管理不備によるトラブルなどです。

これらは社内の体制に問題があるとともに、利益優先で従業員や設備にかなりギリギリの削減をしていたことも大きな原因になっています。

経費削減のために余剰人員を減らしたり備品の購入を渋ったりすると、一時的には利益は確かに生じますがそのしわ寄せは必ずどこかに出てきてしまいます。

無理な人事は行わない

わかりやすく言えば10人でそれまで勤務していた仕事を、人員削減によって8人で行うように業務改善を行うと、確かに二人分の人件費は減少しますが例えば風邪や怪我などで一人が抜けてしまった場合にはそれまで10人でやっていた仕事を7人で行うことになります。

退職や休職があった場合には他の人員を補充しなくてはいけませんが、そうそうタイミングよく即戦力となる人が入ってくれるとも限らず、それがまた新たな退職の原因になるようになってくるともはや業務は成り立たないほどのギリギリの状況に追い込まれてしまいます。

従業員の作業効率をあげたり、設備や施設内の環境を整えてより速い時間で正確に仕事ができるようにするということは確かに大切なことですが、それによって安全性を犠牲にするということは合ってはならないことです。

ありがちなのが、現場の人間が安全性の確保のために3回のチェックをしていたようなことを、効率面での向上をさせるために人事や経営者が2回のチェックに減らすような指示をするといったことです。

経営者や管理職にとっては短い時間での生産性を高めることこそが業務上の大命題になるのは確かなのですが、そのために削るものの大切さを見失ってしまってはまさに本末転倒です。

管理職や経営者が現場の人間からの信用をなくしてしまうと、より事故が起こりやすい環境となってしまったりします。

人命や安全性を第一に考える業務をすることこそが本当の業務改善であるということを忘れずに計画をたてていってもらいたいところです。

経費削減と消耗品

文書

本来の目的を明確にする

経費削減をするときには、本来の目的がきちんと達成できるかどうかを考えながら行うようにすることが大切です。

一昔前には、無駄な紙の廃棄を防ぐため一度コピーをした紙の裏側にもコピーをすることを義務付けた企業が多く見られていましたが、裏紙コピーをすることでコピー機のローラー部分にインクがついてしまい劣化を進ませてしまい、さらに読み取り機内にとれない汚れをつけてしまうようなマイナス作用もありました。

さらには一度使用した紙についていたクリップやホチキスを外し忘れてしまう人も多かったことで、コピー機の寿命を縮めトータルとして経費はむしろ増やしてしまうことになったという事例があったのです。

目先の利益より長期的な削減を

このような事例で考えなければいけないのが、経費削減をするときには目の前の小さな利益ばかりに気を取られるのではなく、長期的に固定費を減らす方法を考えるということです。

コピー機ばかりでなく、光熱費においてもこまめに電源をつけたり消したりするようにしたことで反対に立ち上げ時にかかる電気料がかかるようになってしまったり、オフィス内の電灯の数を減らしてしまったことで、作業効率が落ちてしまったというような失敗例はあげればきりがありません。

とはいえ、経費削減策として行う場合、そのようなこまかい失敗例も全く役に立たないというわけではありません。
経費削減を社内全体で行うときには、まずは「固定費を削減するための努力をする必要がある」ということを社内全体に意識させるようにしなくてはいけません。

コピー機における裏紙の使用や電源のこまめなオフは、少なくとも初期段階でのコスト削減意識を植え付けるためには有効な手段です。

まずは、社内の意識改善から

実際の効果を考えての施策は2段階目として、まずは社内全体の意識を一つの方向に向けることを優先的に考えましょう。

経費削減をするときにもう一つ気をつけたいのが、経費削減をするために他の面でマイナスとなるような要因がないかということです。

例えばコピー機の裏紙使用においては、裏紙には他の取引先には見せたくない重要な情報が記載されてしまっていることがよくあります。

注意をしているつもりでも、社内資料に日常的に裏紙を使っていると、客先にもついつい持ち込んでしまったりしがちです。
営業担当者などは自分自身の営業成績にかかわらない情報が漏れてしまうことには意外に鈍感なものです。

経費削減をするときには細心の注意を払い、目先の利益にこだわらない方法を選んで実践していきましょう。

経費削減と組織再編を同時に行う

細かな提案をしてくれるコンサルタントはごく一部

経費削減を効果的に進めるためには、一面的な効果だけでなく企業組織全体に与える影響を考えて行わなくてはいけません。
よくあるのが、やり手の経営コンサルタントを都内などから招へいして、企業内部の文化や人間関係などを無視して資金面のみに着目した経費削減を行うといった方法です。

もちろん一流と呼ばれる経営コンサルタントさんの中には、社内の文化や地域コミュニティとの関連、これまでの企業沿革に留意しながら経費削減策を打ち出してくれるような人もいますが、そこまで細かく気を遣って提案をできる人というのは本当にごくわずかです。

経営コンサルタントに依頼しないまでも、組織改革を焦るあまり有名経営者のセミナーや勉強家に参加をした知識のみで経営戦略を立てようとする若手経営者の方もいます。

企業内部の運営改善を行うためには、知識だけでなくそこで働く人や組織同士の関係を視野にいれて考えていくようにしましょう。

よくない影響を与えたエピソード

実際にあった例として、一面的な経費削減策をやってしまったことで、企業内部によくない影響を与えたエピソードを説明をします。

とある地方にあった中堅製造業では、大手企業の海外工場進出の影響もあり、業績に悪化に悩んでいました。
しかし昔ながらの企業であったので、単純に経営状況が悪くなってきたからといってすぐに人員をカットすることはせず、人あまりの状態となりながらもほそぼそと営業をしてきました。

そんなとき、製造部から現在使用している機械の故障頻度が高まり、能力も陳腐化してきたことから新しい機器への買い直しをしてほしいという要望が上がってきました。

確かに使用中の機器はかなり古くなっており、調べてみたところ新しい機械に買い直せば作業効率は大幅にアップする上に、新たな機能がたくさんつくことがわかりました。

そこで、製造部の責任者がどうしても新しい機器を購入したいと取締役会の議題に上げてきました。

しかし考えてみれば既に製造部では人あまりが続いているのに、そこでより人員が少なくても同じ作業ができる機械を入れたら、ますます個人の仕事がなくなってしまいます。

また、仕事受注量全体が下降しているのに、より生産性の高い機器を入れることにメリットがあるとは思えません。
結果、それを導入することで企業全体が得られる利益はなく、むしろ総合的にはマイナスになることがわかり案はボツとなりました。

経費削減の目的は、あくまでも平常時の余剰経費を減らすことにあります。
それを忘れては適切な対策をとることはできません。